中村 朝美さん
12年目
聖友学園 家庭支援地域担当
子どもが好きで、子ども関係の仕事がしたいと思っていました。大学生の頃には、保育園でアルバイトをしていたことも。福祉士になれたらと思っていた時期もありました。
就職を考える中で、より深く親子関係に関わったり、心配な家庭に入り込んだりして、子どもの育ちに関わりたいという思いが強くなり、児童養護施設で働くことを選びました。
テレビのニュースで虐待の問題を知り、自分なりに少しでも社会課題に向き合いたいとも思いました。家庭の外にも信頼できる大人がいること、生まれた環境に課題があっても、自分の力で切り開いていけること、それを子どもたちに伝えていきたいです。
保育関係の学校ではなく、心理学科だったので、施設を直接見たり聞いたりする機会もなく、また実習の経験もありませんでした。家から通いやすい施設を数か所見学させてもらい、職員さんの人柄がよく雰囲気がよかったのが聖友学園でした。
グループホームでの勤務(合間に産休育休も1年間)、育児指導担当を経て、現在は家庭支援専門相談員として、主に4つの地域活動に取り組んでいます。
1つ目は「きずなサロンconico(コニコ)」の運営です。杉並区の社会福祉協議会の認可を受けた事業で、月に2回、水曜日の午前中の時間を開放し、おうちの方の交流の場や居場所として利用いただいています。
2つ目は「育児相談ルームconico」。できるだけ気軽に相談してもらえるよう、入り口はメールで、育児の困りごとや発達についての相談を受け付けています。
3つ目は「漢字検定」の会場運営。地域の方に広く来ていただいています。家族受験をしていただく方も多いです。
4つ目は、年に2回程度「子育て広場」として、講師を招いて子育てに役立つ情報を発信しています。
いずれも地域の方ならどなたでもご利用いただけます。
その他に、杉並区の子ども家庭支援センターからの要請に応じて、要支援ショートステイ(要支援・要保護家庭への利用勧奨によるもの)の受け入れも担当しています。
子どもとの信頼関係を築けた時、その子どもの成長を感じた時にやりがいを感じます。卒園まで成長を見届けた子どもが、アフターケアで、今、がんばっている姿を見せてくれようとしてくれる時、本当に嬉しいですね。
施設に来たばかりの時、全然お話を聞けなくて、例えば参観に行ったら活動の流れも無視して駆けよってきてしまうような子がいて。歓迎してくれるのは嬉しくもあるんですが(笑)、そんな様子だった子が成長して、今や中学生。集団活動ができるしっかりした子に成長しています。体も大きくなり頼もしくもありますが、小さくかわいかった頃のことを知っているから、何があっても憎めないですね。
ある女の子と、通院で遠くまで電車で行った帰りに、雪で電車が止まってしまい、遠い道のりをゆっくり話しながら歩いて帰ってきたことが印象深いです。
宿泊行事も楽しいですね。奥多摩にキャンプに行ったこともあります。バームクーヘンを作ったり、ラフティングをしたり、いろいろなアクティビティを経験します。自然の中での共通体験を通して、子どもたちが成長するのを感じます。
対子どもについて、その時その時苦労はありますが、職員同士の連携で乗り越えてきました。育成日誌をまとめていると「こんなことがあった」「あれもこの時期か」と懐かしく思い出しますが、不思議と過ぎてしまえば苦労というほどのことはありません。
個人的に苦しかった時期は、主任という役職がつき、職員の統率を見ていかなければいけない立場になった1年目でしょうか。職歴は長くなってきたけれど、自信は持てない中、責任が大きくなっていく中でのプレッシャーがありました。
自分も含め、産休育休後復帰して働いている職員、パパ職員、ママ職員も多くいます。宿直回数は元々月8回位でしたが、復帰後は多くても週1回に調整をしてもらったり、担当をつけずフリーにしてもらったりと、子育てをしながらでも無理なく働けるよう様々な配慮をしてもらいました。
私の家庭の話でいえば、子どもが病気で長期入院をしなければいけない時期がありましたが「施設の子どものことは変われるけど、家の子どものことは変われないから優先して」と、快くお休みをさせてもらったこともありました。基本的に1人で抱えている仕事はなく、最低でも2人、3人で担当し、負担を軽減しています。
自分が親として子育てをする前に、一通り施設での子育てを経験してきていたので、初めての育児なのに初めてでないという感覚がありました。
親として、保育園に子どもを預ける経験や、子育てへの葛藤も抱え、職員として実感をもって悩みを持つ保護者と関われるようになったと感じます。若いころは「あなたになにがわかるの」という保護者の態度を感じることもありましたが、子育てを経験した今は、自信をもって保護者と関われるようになりました。
まわりの職員に負担をかけて申し訳ないと思うことも多くありましたが、今の自分だからこそできることや考えられることがある、そう思っています。
自分の子どもに対しても、以前は宿直で寂しがらせることもあり申し訳ないと思うこともありましたが、先輩に「やりがいをもって働く姿を子どもに見せては」とアドバイスをもらい、胸を張って働いてきました。今では、子ども自身も児童養護施設について、また私の仕事についてもしっかり理解をしてくれるようになりましたよ。