沼野井 洋さん
9年目
聖友学園 主任保育士
大学を出てから20年位、一般企業で働いていました。実は、児童養護施設で働きたいという希望はあったのですが、違う業界に入ってしまったので、恐らくもうこの仕事に就くことはないだろうと思っていました。それが、景気が悪くなったり、その業界自体が下火になってきたりということがあり、もしかしたら、転職できるチャンスなんじゃないかと考え始めたわけです。できることならやってみたいと。 ただ、全く資格もないし、働き始めて肌に合わず続けられないというのも大変なので、まずは企業に務めたまま、毎週土日のみの学習ボランティアを始めました。通い始めた当時、中2だった子が高3になるまでの5年間、勉強を教える中で、本当に転職をした時にやっていけそうか考えながら、児童養護施設の仕事を垣間見て少しずつ自信がつき、あるタイミングで「エイヤ」と飛び込んだ感じです。
一般企業だと「利益の追求」のような、決められた予算でひたすら売上を上げることを強いられるような、そういう大変さはこの仕事ではまったくありません。逆に大変なのは、子どもとの関係を築くことの難しさや、すぐに仕事の結果が出ないことでしょうか。
子どもは施設の中でいろいろな大人に出会います。すぐ辞める人もいれば最後まで面倒を見てくれる人もいる。いろんな人が自分の横を通り抜けていくので、最初から大人を信用してくれません。職員の仕事として考えると、働きかけてもすぐに報われることはなく、何があっても粛々と毎日仕事に来て子どもたちと接していく。いつの間にか関係ができて、ある時、ちょっと会話ができるようになるとか、そんな積み重ねです。
卒園する時は、とても悪い子だったんですけど、何年かしてある日、手土産なんか持って訪れてきて、施設にいた頃のことを思い出してお互い「あの時は悪かった」なんて言葉を交わして、その時初めて、子どもとの関わりに一区切りできたのかなと思うことがありました。すぐに結果が返ってこない、そのあたりがとても難しい仕事だと思います。
ある1人の子どもとの関わりです。当初は、私に対しても「この人、本当に最後まで関わってくれるのか」と疑心暗鬼なところがあって、なかなか心を開いてくれなかったんですが、月日を重ねるうちにだんだん会話もできるようになりました。飛び出して帰ってこない時もありましたし、警察が来てしまう時もあるような、手のかかる子でしたが、なんとか園を出て、アフターケアの形で関わっていく中で「今、俺頑張って仕事してるんだよね」と報告を受けたりとか、いい話が聞けると、「ああ、やってて良かったな」とやりがいを感じます。
施設のある阿佐谷地区は、地域の人を巻き込んでやるお祭りや行事が多いので、それに参加しています。ジャズストリートという音楽イベントに参加したり、ゆうやけ市というお祭りに模擬店を出したり。地域との関わりを大事にしていることは、聖友学園ならではの素晴らしいことのひとつです。
聖友学園には、グループホームがいくつかあるんですけれども、地域ミーティングを開催しているホームがあります。地域の方々と月に一度ないし2ヶ月に一度集い、この地域で何をやっていったらいいかとお話をする場面もあります。例えば大地震が起きた時に地域としてどう助け合うか、消火器の設置個所を考えたりもします。そういう取り組みを通して、地域に根差した活動ができることは意味があるなと思っています。
新人職員もですし、その前の段階の実習生の受け入れも積極的に行っています。実習生を受け入れていない時期がないくらいです。実習の最初にどんなことを頑張るか、目標を刷り合わせ、最後にしっかり振り返りをするというように、実習に手応えを感じてもらえるよう手厚く対応しています。
新人職員には、しっかり時間をかけ段階を踏んで成長してもらいます。今年は特に新人さんが多かったんですが、例えば泊まり勤務も一律に始めるのではなく、子どもの状況や、それぞれの尺度で判断しスタートしています。
東京都には多くの児童養護施設があるので、選択肢も多く迷われることも多いと思います。聖友学園は、まず先ほどの話でもふれたように、手厚い育成が魅力だと思います。後は乳児院と一体化していること、地域に根差していること、施設としては大きくありませんが、その中でも職員みんながこの施設をよいものにしよう、支えていこうと思っていることも魅力ですね。そういった環境に身を置いて働きたいと思っている方に、ぜひ来てもらいたいですね。